1.TDSとは
TDS(質的経時変化測定法)は、Temporal Dominance of Sensation のことで、複数の感覚の時系列変化を同時に測定する方法です。複数の感覚の時系列変化を同時に測定することができる利点があるとされています。
2.測定法
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試料をパネリストに呈示した後で、その多くの感覚属性の変化を同時に測定する。
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パネリストは、知覚に変化を感じる度ごとに(強度や質の変化)、どの属性が注意を引くかを判断する。
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属性を示すボタンが画面に呈示され続けるが、パネリストは、瞬間毎に注意を引いた属性のボタンを押し続け、別の感覚が注意を引いたときは、そちらにシフトする。
3.データ処理
(N.Pineau et al.(2009)27)より、修正して引用
- すべてのパネリスト、すべての繰り返しのデータをもとに、各時点において、注意を引いたと判断された属性の割合(優位比率)を求めます。上図では10 の味覚の内、甘味についての割合の時系列変化が、まず求められています。この例では、4人のパネリストが同じ味覚テストを2回繰り返していますが、例えば、甘味に関して、各回で甘味のボタンが押された時間を(秒単位で)記録し、それぞれの時点毎に、8個のデータを加算します。この例では、4人のパネリストが2回繰り返したので、同じ時点でボタンが押される回数は最大で8回です。実際に、ある時点で8回ボタンが押されたとすると、その割合(優位比率)は、8/8 で、1.0 ということになります。
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その割合の変化過程を、横軸に経過時間、縦軸に①で求めた割合(甘味が他の味覚の中で注意を引いたと判定された割合)に取って、図に示します。
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2で得られた関数は、階段状に変化したものになるため、関数のスムージングを行います。→ TDS 曲線を求めます。
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同様に、すべての属性についてTDS 曲線を求め、図に描きます。
4.データ分析法について
TDS曲線
Ps:各時点で属性が選択される比率が有意になる(チャンスレベルPo よりも大きくなる)最低の値。TDS曲線のあらゆるポイントで、有意になる比率の最低値。
Po:チャンスレベル(Po =1/P: P は、調べる属性の数)
n:試行数。被験者数×繰り返し数
TDS曲線の例
N. Pineau et al. (2009) Temporal Dominance of Sensations: Construction of the TDS curves and comparison with time-intensity. Food Quality and Preference 20, 450-455. より引用
図中の点線(優位比率が0.162 に相当)よりも上の値がチャンスレベルよりも上の点を示しています。試料FC と試料FK の結果を示しています。
TDSの差の曲線
2つの試料に対する曲線を比較するために、両者の優位比率の差についてのp曲線を表示します。2試料間の差をグラフに表示しますが、その際、2試料間に有意差のあったところだけを曲線に表示しました。
有意差の検定は、以下の式によります。
ただし、
ここで、
Ptdiff:時刻tにおける比率の最小有意差(α =0.05)
P1t:時刻t における試料1の生起比率
P2t:時刻t における試料2 の生起比率
n1:試料1を評価したときの被験者×繰り返しの数
n2:試料2 を評価したときの被験者×繰り返しの数
各時点の試料間の優位比率の差の絶対値がPtdiff よりも大きければ有意となります。
N. Pineau et al. (2009) Temporal Dominance of Sensations: Construction of the TDS curves and comparison with time-intensity. Food Quality and Preference 20, 450-455. より引用
参考文献
製品開発に役立つ感性・官能評価データ解析−Rを利用して
5.J-SEMS.TIMEでのTDS
特徴
J-SEMS.TIMEでのTDSには以下の特徴があります。
- 最長60分までの計測ができます。
- 計測は0.1秒間隔で可能です。
- 感覚数は最大16まで設定できます。
- 設定した感覚はiPadの画面でボタンをタッチすることにより選択できます。
- 設定した感覚はマイクから入力した音声で選択できます(オプション)。これにより、画面に触ることなく検査ができます。
- 設定した感覚はフットスイッチ等の外部入力で選択できます(オプション)。これにより、画面に触ることなく検査ができます。
- 検査結果を集計し、TDS曲線や差の曲線を描画することができます。
- 検査結果はパソコンにダウンロードすることができます。
例
検査画面
TDS曲線