1.TCATAとは
TCATA(Temporal Check-All-That-Apply)は、TDSと同様に複数の感覚の時系列変化を同時に測定する方法です。TDS の場合は、同時に選択できるのは一つの感覚属性に限られていますが、TCATA の場合は、複数の感覚属性を同時に選択できます。
2.測定法
- 試料をパネリストに呈示した後で、その多くの感覚属性の変化を同時に測定する。
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パネリストは、感覚を感じたらその感覚に対応する感覚属性ボタンを押す。感覚属性ボタンを放置すれば、そのボタンは押し続けられたことになる。
- その感覚が感じられなくなったらその感覚属性ボタンを押して解除する。
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最初の感覚が続いているのに他の感覚も感じられたら、そのボタンを押すことができる。そして、新たな感覚属性が感じられなくなった時点で解除する。
- つまり、複数の感覚属性ボタンを同時に押すことが許される。
3.TCATA曲線
- 下図は試料番号1のヨーグルトに関する10 の感覚属性のボタンが押された時間帯を示したものです(Castura,J.C., et al.、2016)36)。図中の灰色のバーは、それぞれの感覚属性が選択されていた時間を示しています。横軸は経過時間です。
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すべてのパネリストに繰り返して計測した1のデータをもとにして、試料ごとに、各時点で感覚が生じたと判断された属性の割合(選択比率)を求めます。
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その選択比率の変化過程を、横軸に経過時間、縦軸に②で求めた選択比率に取って、図に示します。なお、下図には、上述の10 の感覚属性の中のストロベリーフレーバーが選択された比率が示されています。
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3で得られた関数は、階段状に変化したものになるため、関数のスムージングを行う。→ TCATA 曲線を求めます。
- 同様に、すべての属性についてTCATA 曲線を求め、図に描きます。
以下、(Castura,J.C., et al.、2016)36より引用
Castura, J.C., et al., 2016より引用
4.TCATA の差の曲線
各時間t における2つの試料間のTCATA 曲線の差の検定をフィッシャーの直接確率法により行います。この場合も、2行2列の行列を作成します。例えば、感覚属性a について、試料gと試料hの差の検定を行う場合、1列目はチェックされた度数を2列目はチェックされなかった度数を入れ、1行目には試料gの度数を、2行目には試料hの度数を入れます。つまり、試料gでチェックされた度数は1行1列目のセルに、試料hでチェックされた度数は2行1列目のセルに入ることになります。下図にTCATA の差の曲線の例を示します。実線で描かれているところが検定の結果有意になったところです。
Castura, J.C., et al., 2016より引用
5.対応分析
時間t ごとに各感覚属性がチェックされた度数を求め、それらの値をもとに対応分析を行い、各試料に対する評価の時系列的な変化を2次元とか3次元の空間上に示すことができます。
対応分析による試料と感覚属性の2次元空間上へのマッピング
Castura, J.C., et al., 2016より引用
参考文献
製品開発に役立つ感性・官能評価データ解析−Rを利用して
6.J-SEMS.TIMEでのTCATA
特徴
J-SEMS.TIMEでのTCATAには以下の特徴があります。
- 最長60分までの計測ができます。
- 計測は0.1秒間隔で可能です。
- 感覚数は最大16まで設定できます。
- 設定した感覚はiPadの画面でボタンをタッチすることにより選択できます。
- 設定した感覚はマイクから入力した音声で選択できます(オプション)。これにより、画面に触ることなく検査ができます。
- 設定した感覚はフットスイッチ等の外部入力で選択できます(オプション)。これにより、画面に触ることなく検査ができます。
- 検査結果を集計し、TCATA曲線や差の曲線を描画することができます。
- 検査結果はパソコンにダウンロードすることができます。
例
検査画面
TCATA曲線