感性・官能評価システム J-SEMS

一対比較法

一対比較法

順位法では、感覚や好みの強さを測るのに、全ての試料を一度に評価して順位付けする必要があります。試料数が多くなると、一度に順位付けすることが困難になることがあります。そのような場合、2つの試料を対にして比較します。これを全ての対について行う方法が一対比較法です。

J-SEMSで実施できる一対比較法は以下です。

試験法 概要
一意性の係数 3つの試料A,B,Cがある時、A>B、B>Cならば、A>Cであるはず。このようになっているかを検定する。
一致性の係数 複数のパネルの一対比較の判断結果がどの程度一致しているかを調べる。
ブラッドレイの一対比較法 2つの試料を良い(好き)で評価する。一人のパネリストに対して、1組を提示する。2つの試料を提示する順番は考慮しない。パネル数が少なくても解析可能。
サーストンの一対比較法 2つの試料を良い(好き)で評価する。一人のパネリストに対して、1組を提示する。2つの試料を提示する順番は考慮しない
シェフェの一対比較法(原法) 2つの試料を複数の段階で比較する。一人のパネリストに対して、1組を提示する。2つの試料を提示する順番を考慮する
シェフェの一対比較法(浦の変法) 2つの試料を複数の段階で比較する。一人のパネリストに対して、全ての組を提示する。2つの試料を提示する順番を考慮する
シェフェの一対比較法(芳賀の変法) 2つの試料を複数の段階で比較する。一人のパネリストに対して、1組を提示する。2つの試料を提示する順番は考慮しない
シェフェの一対比較法(中屋の変法) 2つの試料を複数の段階で比較する。一人のパネリストに対して、全ての組を提示する。2つの試料を提示する順番を考慮しない

ブラッドレイ、サーストン、シェフェ(原法)、浦の変法、芳賀の変法、中屋の変法の違いは以下です。

手法 段階 提示 順序効果
ブラッドレイ 二択 なし
サーストン 二択 なし
シェフェ(原法) 複数 あり
浦の変法 複数 全対 あり
芳賀の変法 複数 なし
中屋の変法 複数 全対 なし

 

1.一意性の係数

あるパネルに、A~Fの6つの飲料のパッケージのデザインに対して、一対比較法で、どちらが好きかを答えてもらった。

説明

A>B,B>C ならばA>Cのはずですが、時に、A<C になってしまう場合があります。このような関係を一巡三角形といいます。試料の数がn個あった時に、3つずつ組み合わせて一巡三角形の数dを数える場合、一巡三角形が生じる確率が十分に小さいならば、各試料間に順位をつけられた、すなわち、順位に一意性があったと考えられます。この検定法を一意性の検定といいます。

 

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ガイドブック「製品開発に役立つ感性・官能評価データ解析-Rを利用して-」での解説


2.一致性の係数

5種類の洗濯機の嗜好順序を決めるために、5人のパネリストに2個ずつを対にして提示して、どちらを好むか回答してもらった。

説明

n人の一対比較の判断結果がどの程度一致しているかを調べて、十分に一致しているならば、n人の判断の合計順位を意味のある順位としようとするものです。

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3.ブラッドレイの一対比較法

4種類のラーメンを対にして、どちらが好きかを回答してもらった。パネル数は1。どちらを先に食べるかは考慮しない。

説明

どちらが良いか(あるいは、好きか)という1か0の評価データから、判定比を逐次近似により推定する方法です。

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4.サーストンの一対比較法

大根を切った時の5種類の包丁の切れ味について、サーストンの一対比較法により調べた。300人の消費者を30人ずつの10組に分け、どちらの包丁の方が切れ味が良いかを評価してもらった

説明

ブラッドレイの方法と同様に、対にした2 種類の試料のどちらが上位かを判定するだけで、シェフェの方法のように、その程度まで答えさせることはしません。

 

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5.シェフェの一対比較法(原法)

4種類のカップ麺を12人のパネリストに5段階で比較してもらった。各パネリストは1回しか評価しない。各パネリストに提示する順序を考慮する。

説明

評点をつける一対比較法です。評定者は、試料に対する嗜好を評価する検査で、一対の試料を提示された時に、どちらの試料の方が好ましいかを答えるのと同時に、それがどれくらい好ましいかを評定します。

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6.浦の変法

4種類のチョコレートを3人のパネリストに7段階で比較してもらった。各パネリストは全ての組み合わせを評価する。各パネリストに提示する順序を考慮する。

説明

原法と評価の方法は同じだが、同一の評定者が全対を比較する点が異なるります。この方法は、小規模に実験をしたい時に便利な方法です。この方法では、比較順序を考慮します。つまり、一対の試料を提示する際に、時間的な順序や空間的な位置の効果が、データに影響すると思われる時は、この方法を用います。

 

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7.芳賀の変法

4種類のうどんを180人のパネリストに5段階で比較してもらった。各パネリストは1組を評価する。各パネリストに提示する順序を考慮しない。

説明

t個の試料の中から任意の一組について、総勢N人の評定者に1 回ずつ評点をつける一対比較法で評価してもらいます。各組の評定者の数は、n=N⁄{t(t-1)} 人となります。この点は、シェフェの原法と同じです。ただし、ただし、後か先かなどの順序効果や、一対を同時に提示した場合の空間位置効果はないものとするので、総判断数は、原法の半分で済みます。浦の変法のように一人の評価者がすべての組み合わせを評価するのではなく、シェフェの原法と同様、一人の評価者は、一組の試料しか評価しません。

 

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8.中屋の変法

4種類のカレーライスを3人のパネリストに7段階で比較してもらった。各パネリストは全ての組を評価する。各パネリストに提示する順序を考慮しない。

説明

比較順序は考えず、かつ、一人の評価者がすべての組み合わせを1 回ずつ比較する場合に用います。この方法も、浦の変法と同様に、小規模に実験をしたい時に便利な方法です。この方法は、浦の変法と同様に、一人の評価者がすべての組み合わせを評価するが、一対の試料を提示する際に、時間的な順序や空間的な位置の効果が、データには影響しないという前提で、比較順序を考慮しないので、試行数は、浦の変法の半分になります。

 

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参考文献

製品開発に役立つ感性・官能評価データ解析-Rを利用して-